ノースイースタン大学の研究者、Google Cloud Platform を使用してジカウィルスの拡散をモデル化

ジカウィルスを迅速にモデル化する方法を模索していたノースイースタン大学の「生物および社会技術システムのモデリング(MoBS)研究所」は、Google Compute Engine(GCE)とプリエンプティブ仮想マシンを活用することで、1,000 万件以上のシミュレーションの実行とデータ分析にかかる時間を大幅に短縮させました。

2015 年、蚊によって媒介されるジカウィルスがアメリカ大陸で急速に拡散した際、各国で渡航禁止や検疫の措置が取られたほか、2016 年のリオ五輪の開催中止も議論されました。世界保健機関(WHO)によって「国際的に懸念される公衆衛生の緊急事態」が宣言されると、感染が広がる各国の政府では、新たな感染の発生率と発生場所を正確に予測できる手段が必要になりました。感染者のうち症状が現れるのはわずか 20% であるため、ジカは特に予測が難しいウィルスです。

2016 年 1 月、ノースイースタン大学「生物および社会技術システムのモデリング(MoBS)研究所」のチームは、Center for Inference and Dynamics of Infectious Diseases(感染症の推測と動態研究センター)の協力のもと、公共機関や研究者によるジカウィルスの進化と拡散についての研究を支援するために「ジカウィルスのモデル化プロジェクト」を立ち上げました。

「ビッグデータや圧倒的な計算処理能力を利用することで、研究者や公衆衛生機関を支援していきたいと考えています。」

Matteo Chinazzi, ノースイースタン大学, 准科学研究員

重要な予測ツールや分析ツールなどを提供する GCP

MoBS 研究所のチームは、Google Cloud Platform(GCP)を活用した数学的および計算論的アプローチにより、ジカウィルスが拡散するさまざまなシナリオを研究し、地域の人々への影響を予測しました。このモデルは 2015 年にブラジルで発生したジカウィルスの初期拡散を基にしています。これにより、研究者は気温、蚊の数、人口規模、旅行者の渡航パターンなどのデータ層を追加することで、他の場所での新しい感染の影響を予測できるようになりました。

GCP では、複数の並行シミュレーションを実行することで、モデル化したシナリオによって生成されるテラバイト級のデータを分析することが可能です。「チームでは複数の GCP ツールを使用しています」と話すのは、ノースイースタン大学の准科学研究員である Matteo Chinazzi 氏。「すべてのモデリング データの保存とウェブサイトのホストに Google Cloud Storage を使い、感染症のまん延のシミュレーション実行に Google Compute Engine(GCE)とプリエンプティブ仮想マシンを使用しているほか、日付や感染者数などの変数を含むシミュレーション シナリオの分析には BigQuery を利用しています。これまでに全体で数百テラバイトもの膨大なデータを処理してきましたが、Google Cloud Storage にはそのすべてが保存されています。」

スケーラブルかつ迅速な処理能力

MoBS 研究所のチームは、GCE とプリエンプティブ仮想マシンを使って 1,000 万件以上のシミュレーションを実行しました。GCE と BigQuery により、シミュレーションの実行とデータ分析にかかる時間が大幅に短縮され、本来であればそれぞれの処理に数週間かかるところが数時間で完了できるようになりました。Chinazzi 氏は次のように述べています。「何千もの独立した仮想インスタンスに、並行して拡張できる柔軟性が確保されたため、感染症のまん延のシナリオ 1 本に対して、最大 25 万もの独立したシミュレーションから成る詳細な分析結果を 1 日以内で生成できるようになりました。」

このモデルは、研究者によるジカウィルス拡散の研究を支援する以外に、デング熱などの他の伝染病を分析するためのテンプレートとしても活用できる可能性があります。ジカウィルスに対する WHO の国際的緊急事態の宣言は解除されましたが、蚊が媒介する感染症の大流行を未然に防ぐための課題はまだ残されています。MoBS 研究所のチームは圧倒的な計算処理能力やビッグデータを利用することで、この課題の克服に取り組む研究者や公衆衛生機関を支援していきたいと考えています。

Chinazzi 氏は次のように締めくくっています。「伝染病の大流行への対応は時間との戦いになりますが、GCP のおかげでスケーラブルかつ迅速に対応するために必要なツールを手にすることができました。」

『Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America』(米国科学アカデミー紀要)に公開されている「Spread of Zika virus in the Americas」(アメリカ大陸におけるジカウィルスの拡散)では、MoBS 研究所が行ったジカウィルスの研究と分析についての詳細をご覧いただけます。

「何千もの独立した仮想インスタンスに並行でスケーリングできる柔軟性のおかげで、25 万もの独立したシミュレーションからなる感染症のまん延のシナリオに対して、詳細な分析結果を 1 日で生成することが可能になりました。」

Matteo Chinazzi, ノースイースタン大学, 准科学研究員

教育機関のプロフィール

ノースイースタン大学の「生物および社会技術システムのモデリング(MoBS)研究所」では、データに基づく感染症拡散モデルの構築に取り組んでおり、人間の社会行動の研究、複雑な社会的、技術的ネットワークの進化のモデルリング、ウェブやインターネットなどの IT ネットワークの利用状況とトラフィック パターンの分析、社会的動態とオンライン上の行動の相互作用の研究を行っています。

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